梅雨

窮地に陥った際、人間の本性が顕れる。

母親が息子を殺した方がいいと私に言った時。

私は父親にまず伝えた。

すると、

何をバカな事を言っているんだ。

父親はそう言った。

何故突然馬鹿げた事をという意味なのか、

父親の中で信じたくなかったのか、

状況を受け止められなかったのか、

真意は今となってはもう分からない。

当時の私には、逃げているように見えた。

私は同居している祖母にも伝えた。

すると、

私はあの子を本当の孫だと思っていない。

祖母の一言に驚いた。

表向きは跡取りが生まれ喜んでいたものの、

不妊治療を経て生まれたから自分の孫ではないと。

不妊治療を何だと思っているのか。

ショックだった。

この状況で祖母に不妊治療を説明するのは、

問題がややこしくなるだけだと判断した私は、

祖母に不妊治療の説明をする事をあきらめた。

母親の発言、祖母の発言、

ダブルパンチをくらった私は、

弟には伝わらないように努めた。

相互扶助、助け合い、家族…

色々な概念がぶっ飛んだ事件だった。