あの子を殺した方がいいんじゃないか。
母親が思い詰めた顔で涙を浮かべ言った台詞。
当時私は16才。
大学進学率100%の田舎の進学高校1年。
母親の闇を背負うにはまだ幼かった。
常に競争を強いられる進学校。
毎日テストだらけで、勉強漬け。
授業についていくだけで精一杯だった。
そこに母親の爆弾投下。
私が壊れるのに時間はかからなかった。
母親のその一言だけは鮮明に覚えている。
弟が殺される。
心臓が一瞬止まった気がした。
でも、その時に自分がどうしたか、
不思議と直後の記憶はあいまいで、
その時期の記憶はほとんどない。
毎年梅雨が来ると呼び起こされる、
忘れられない梅雨の夜の思い出。